第4回ジャック・ランスロ国際コンクール

8月31日準本選会
9月2日本選会

の演奏を聴きに横須賀へ行きました!
往復4時間2000円と、半ば旅気分でした。笑



でも朝から夕方まで聴きにきた甲斐がありました。


とてもとても勉強になった。



まず。

私は今回このコンクールを受けませんでした。

なぜかというと”ジャック・ランスロ”という偉大なる”フランス”の音楽家の名前を掲げたコンクールだったから。


きっと少なからずフランス的なスタイル、そういったものが評価されるんだろうと思い、私のスタイルとは違うだろうと考えたからです。



クラリネット の世界において、”ドイツ的” “フランス的”というのは相容れぬ両極端のような存在だとされていると思う。その言葉自体に呪いを感じるほど。



無意識のうちに、クラリネット奏者はそういったスタイルの型に他人も自分もはめてしまう、はまってしまう気がします。


そういう私も自分のスタイルを”ドイツ的”と型にはめてきていました。



今回の演奏を聴いて1番衝撃的だったのはここでした。



もちろん審査員の顔ぶれも世界中から集まった素晴らしい音楽家の人だったというのもありますが、



今回のコンクールで1番感じたのは、

良いと思うものにスタイルは関係ない

ということ。

本選には
韓国、中国、ポルトガル、イタリア、フランスのみんな違う国籍とスタイルをもった人が揃いました。



コンクールにありがちな”身内びいき”

そんなのがあるんじゃないかという気持ちもありました。


でもそんなの机上の空論でした。


そしてそんなことに囚われていた自分も恥ずかしくなりました。



みんな、真剣に作曲家に向き合っていたから。


作曲家があり、曲があり、演奏者がいて、評価する人がいて、聴衆がいる。

ただそれだけのこと。

そこには、スタイルとかそんなの関係なかった。良いものはそれを越えて素晴らしいのだと。


例えば

“ブラームスをフランス的に吹いてはいけない”

のではなく

“ブラームスの音楽はブラームスなのだ”

と。


それはスタイルとかじゃなくて
作曲家と向き合うということなのだと。


これではだめ、こうしなきゃいけない


そんな考え方で音楽と向き合うんじゃなくて

寄り添うこと。


そしてそれを自分の声で語りかけること。


誰かに言われたからではなく
本心を語ること。



それがいかに大事が思い知りました。


それから、
コンクールとは何かということ。


セミファイナル、ファイナル

共に色んな演奏がありました。


コンクールとは
音楽が素晴らしい=高順位

ではない。

納得させる説得させる力が必要なこと。


その上で自然な音楽があること。



それがコンクールなんだと。


それは悪いことでもないし、コンクールである以上仕方ない。

仕方ないと思ってるのは多分審査員もそうなんだということ。


公式ページに出ていた審査員長のアリニョン先生の言葉(公式Facebookページより引用)


《審査委員長 ミシェル・アリニョン氏 本選終了後コメント》
11名による審査では一時的に意見が分かれることもあったが、民主主義のもとに公平な結果となった。本選ではとても素晴らしいものが生まれた瞬間もあったし、それほどでもない瞬間もあった。モーツァルトはとてもむずかしい曲。私から見ると、ちょっとすべての演奏が速すぎたのではないかと感じた。しかし1人の演奏には魔法のような瞬間があった。第2楽章で、まるでモーツァルトがホールに降りたような吹き方をした人がいた。それはAnn Lepageでした。
若い世代の奏者たちには、音楽よりも自分をアピールしたがる癖を持つ人が多い。音楽が最優先であるべきです。



私はこうした経緯で1番”身内びいき”されるとしたら彼女だと思っていた。


彼女の演奏は素晴らしかった。
本選の最後の演奏で、やっとあぁ、これがモーツァルトが書いた音楽だと思った。
自然と涙が溢れた。

もし、彼女の演奏を聴いてなかったら”身内びいき”で終わったかもしれないけど、彼女の演奏を聴いたからわかる。


彼女の演奏は完成度テクニックの面でほかのファイナリストに劣っていた、減点をせざるを得ない演奏だった。


だから私は彼女が賞を取るのか取らないかにすごく興味があった。

もし取れたとしたら”身内びいき”があったのかなと感じたと思う。

でもそうじゃなかった。

そしてその上でアリニョン先生は賞以上の誉れを彼女に送った。


それに私はすごく感動してしまった。


審査員長として個人名を出してこういったコメントを出せるなんてすごい。

アリニョン先生は彼女を評価”したかった”んだなぁとわかる。

コンクールである以上、つけたい以上につけられない点数もあるんだなぁと。


コンクールの結果自体も、私のこうだったら良いなという順位だった。



完成度、作曲家との寄り添い方


それが上の人が良い賞を取った。



でも人生も音楽もそれだけじゃない。


コンクールで賞を取るためでなく

ひとりの音楽家としてどうあるべきか


アリニョン先生はそんなところまできっと見てるんだなぁってこのコメントを見て感じました。



色々なものの見方が変わる良い機会になりました。



本当に素晴らしいコンクールだった。



そして、セミファイナル、ファイナルで素晴らしい演奏を聴かせてくれた奏者の皆々様に長いコンクール期間お疲れ様と、そして感謝と祝辞を。



私も真剣に、まっすぐに、作曲家と曲と向き合おうと思います。


0コメント

  • 1000 / 1000